インバウンドマーケティングに代表されるメールマーケティングはその歴史こそ長いものの、多くのBtoB企業が効果的な運用ができていないでいる。

本記事では、BtoB企業がメールマーケティングを実践するために必要なTipsを体系的にまとめている。

メールマーケティングの目的

旧式のメールマーケティング(メルマガ)は「情報を届けること」を目的としていたが、現在のメールマーケティングの目的は「態度変容を起こすこと」にある。

こちらが顧客を説得するのではなく、顧客の態度変容を促すのがメールマーケティングであり、すなわち「リードナーチャリング」がメールマーケティングの目的と言えるだろう。

リードナーチャリング

リードナーチャリングとは、初期段階のリード(見込み客)に主にメールを通じて有益な情報を提供し、見込みの高いリードを事前に絞り込むための取り組みである。

マーケティング担当者としては、できるだけ多くのサイト訪問者についてできるだけ多くの情報を入手したいと考えるものだが、サイトにアクセスしてくるユーザーの大半は情報収集のためにアクセスしているだけであり、すぐに購入する準備ができているわけではない。

このようなリードに営業担当者が電話をかけて購入の判断を今すぐ下すよう急かしたところで、そのリードは自社から離れていってしまうだろう。

リードナーチャリングの本質的な目的

そもそもリードナーチャリングとは、ターゲットとなる顧客層を設定し、その顧客層にアプローチするためにカスタマージャーニーの各段階で適切な情報を提供し、顧客の目標達成に最も貢献する(そして最も安全な)選択肢として自社を位置付けるプロセスである。

ナーチャリングのプロセスが効果的に働くと、マーケティングやリードジェネレーション(リードの獲得)を通じて手に入れたプロスペクト(営業担当者にとっての見込み客)が営業フローをスムーズに進んでいき、最終的には顧客に転換する。

リードナーチャリングでは、マーケティングと営業どちらの戦術も利用して、収益予測の精度と増益スピードを向上させることを目指す。

そのためには、リードが購入に至るタイミングやリードのニーズの微妙な違いを理解することが肝要である。

リードナーチャリングの効果

メールを活用すれば、リードとの関係を構築して他社よりもリードの記憶に残ることができ、必要な際に割引やプロモーションを提供できる。

しかし、見込み客の状況と関連がない単発のメール配信は相手の気持ちを離れさせ、ブランドに対してネガティブな印象を抱いたり、メールの購読解除を招いたりする場合もある。

これに対しリードナーチャリングでは、相互の関連性の高い一連のメールを明確な目的を定めた上で送信し、読み手の関心に沿った有用なコンテンツを提供することがポイントとなる。

その意味で、旧来のメールマガジンの一斉送信よりも、リードナーチャリングの方がリードの商談化・顧客化に高い効果を期待できる。

リードが自社に関心を持ったタイミングを逃さない

メールの受信登録の直後は、リードがこちらと最も連絡を取りたいと思っているタイミングであり、メールマガジンの一斉送信では、登録直後のリードと接触するチャンスを逃してしまうという欠点がある。

リードナーチャリングでは、リードに対して適切なタイミングで適切なコンテンツを届けることで、効果的な接触の瞬間を逃すことなく活用できるだろう。

オピニオンリーダーとしての地位を確立できる

顧客は、自分がよく知っていて信頼の置ける企業との取引を好む。

ウェブサイトから初めて問い合わせをしてきたリードが自社のことをよく知っていたり、自社の製品・サービスを選択すべき理由を完全に理解していたりすることはほぼないだろう。

リードナーチャリングは、自社が業界内でも優秀な企業であることを他社よりも先にアピールするチャンスを生む。

リードの関心や課題を特定できる

リードナーチャリングでは、リードが抱えている課題や、リードが関心を持っている機能や製品など、リードに関する詳しい情報を手に入れるきっかけを得ることができる。

さまざまな質問やコンテンツを用意し、どのような人が何に反応するかを確認することで、リードの購入見込み度合いを見極め、リードにとって価値あるやり取りができるようになるだろう。

エンゲージメントの維持や向上につながる

リードナーチャリングの自動化は、自社とやり取りしようと行動を起こしたリードのエンゲージメントを維持するのに有効な方法だ。

また、そのリードがサイトへのアクセスやオファーの検討をやめた場合は、リードナーチャリングを通じて自社のことを想起させることも可能だ。

データベース化は誰の都合か?

リードナーチャリングをする上での企業側のメリットは先述の通りだ。

ここで注意したいのが、データベース化をしたいのは「データベース化を進める企業側の都合」であって、顧客側が囲い込まれたいわけではないということだ。

顧客側が囲い込まれてもいいと思うためには、データベースに登録するに値する何かしらの価値、つまり顧客にとって有益なコンテンツを提供し続けることが必要だ。

コンテンツ面の企画をしっかりと立ててからデータベース化やメールマーケティングを行わないと、ネタ不足に陥りがちで、巡り巡って顧客を維持できない仕組みになってしまう。

メールマーケティングのメリットとデメリット

メリット

多くのビジネスマンがメールを使用している

仕事のコミュニケーション手段としてメールを使っている人は99%、電話は90%。
(出典:一般社団法人日本ビジネスメール協会「ビジネスメール実態調査2020」)

最大のメリットは、多くの人が日常的に使っているツールであるから、タッチポイントとして他チャネルより優れている点にある。

コストがさほどかからない

メールマーケティングは、マーケティング施策の中でも格段に低コストで始められる。

メール配信システムの導入コストは必要だが、無料のものから数千円程度で利用できるものもあり、企業規模に関わらず誰でも導入しやすい。

投資対効果が極めて高い

メールマーケティングで配信するリストは、すでにメール配信の許諾がある状態である。

すでに、展示会や資料請求、既存顧客など何らかの接点が1回はあることから、不特定多数を相手にする広告よりも高い成果を期待できる。

低コストで導入できることも相まって、高い投資対効果が見込めるだろう。

デメリット

継続したコンテンツの制作が大変

マーケティングのチームが社内に存在しておらず、営業が兼務状態での組織においてはかなり負担が大きい施策であるといえる。

会社としてのマーケティングに取り組む体制が不十分なまま、他社事例に追随してメールマーケティングを真似しても、続かなくなることがほとんどだ。

メールマーケティングの種類

メールマーケティングの手法は大きく分けて5つの種類がある。

それぞれ、目的によって適切な手法が異なってくる。

メールマガジン

目的 告知
利用シーン 新製品やキャンペーン、イベントセミナー開催などのお知らせを一斉配信する場合に使用。

メールマガジンは配信を希望するユーザー全員に、同じ内容のメールを送る手法。

キャンペーンの告知や関連サービスの紹介など、定期的に情報を届け、ユーザーとコミュニケーションをはかることができ、長期的なコミュニケーションの手法として有効。

有料のメールマーケティングツールを使わなくても、手軽に始めることができる一方で、一方的なコミュニケーションになりがちで、継続するのも大変で属人的になりやすいのが欠点。

ターゲティングメール

目的 行動喚起
利用シーン 特定地域の在住者にセミナー案内をする、業種や職種を限定して新製品・サービスの案内をするなど。

配信リストのなかから、特定の性質をもったユーザーだけを抽出してリスト化し、それぞれに合わせたメールを配信する手法。

セグメントをわける負荷はかかるが、ユーザー視点に立つと、自分には関係ないメールを受け取らなくても良くなる。

ステップメール

目的 信頼獲得、自社製品・サービスの段階的な説明
利用シーン 資料をダウンロードしたリードに、3日後に1通目、6日後に2通目、9日後に3通目のメールを設定し、自動配信する。

リードの状況に応じて、リードに寄り添ったメッセージを届けることができる。

設計に時間がかかるが、マーケティングオートメーションツール(MA)を利用することで自動化することが可能で、一度設定すれば自動配信されるため、手間にならず属人的にもなりにくい。

シナリオメール

目的 接客
利用シーン 自動配信したメール内のURLをクリックしたら、Aというメールを送り、クリックしなかったら何も送らないなど。

ステップメールとは違い、途中で分岐が発生する。

リードの状況を考えた丁寧なコミュニケーションができるが、設計設定の負荷が大きい。

BtoBビジネスには向かない

シナリオの分岐条件を細かく設計したメールは、リードに寄り添っていて一見良さそうに見えるが、設計も設定も負荷が大きい。

その上、設定してもそもそもの配信母数が少ないとビジネスインパクトは小さくなり、投資対効果が良くない場合が多い。

BtoBビジネス(特にニッチ産業)では配信リストの母数が少ないため、シナリオ分岐の設計に工数をかけるよりも、ステップメールの設計などに注力した方が良い。

リターゲティングメール

目的 行動促進
利用シーン Webページへのアクセスをトリガーとしてメールを自動配信する。

リードがコンサルティングサービスの詳細といったトリガーコンテンツを閲覧したら、無料個別相談の案内メールを自動配信するなどの仕組みを構築できる。

メールマーケティングの手順

準備をする

目的・目標の確認

そのメルマガを配信することで「なにを得たいのか」(目的)を決める。

「メルマガからサイトへの流入を増やしたい」「ユーザーとの長期的な関係を構築したい」など、メルマガ配信で企業全体が重視する要素を明確にすることが求められる。

実施の目的が、新規顧客の獲得なのか、見込顧客の育成なのか、既存顧客のリピートなのか、どれに当たるのかを決めて施策に臨まないと、結果の良し悪しが判断できない。

目的を確認したら、何を成果に置くかという目標を決める。

下記の例のように、具体的な指標と数値目標、期限を設定する。

  • お問い合わせを月20件獲得する
  • MM月DD日開催のセミナーに参加者を30名集める
  • 月のサービス利用者のアクティブ率を来月末までに80%にする

達成したい目標を厳密に特定することによって、オーディエンスやコンテンツ、成果の測定基準など、キャンペーンの全体像を設計することが可能となる。

キャンペーンの目標を設定するのと併せて、営業チームに引き継ぐ基準となるリードの行動を決めておく必要がある。

たとえば、ホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーがいたとしても、そのユーザーは単に情報収集をしているだけで営業担当者と話をする準備が整っていないかもしれない。

このようなユーザーは、リードナーチャリングの対象として、選別プロセスに乗せた方がよいだろう。

もしこのユーザーが再度Webサイトにアクセスしてデモを依頼してきた場合、購入の意思があることが強く感じられるので、営業担当者に引き渡すことができる。

コンセプトを設定する

メールマーケティングでは「だれに何を知ってもらいたいのか」「その情報をユーザーにどのように役立てて欲しいか」という点を考慮するのが基本にある。

よって、メールを送る際には、商材を訴求したい相手がどんな人なのか、細かく設定する必要がある。

BtoBでは、BtoCと違い意思決定者が複数名に及ぶ場合があり、役職や立場によって反応するキーワードも異なる。

単に担当者の年齢や性別、会社の業界や企業規模を決めるターゲット設定に止まらず、その人の具体的な業務上の悩み、意思決定の基準、普段チェックしている情報媒体などを整理した「ペルソナの設定」まで行うべきだろう。

関連記事:ペルソナとカスタマージャーニーマップ

シナリオ設計

ユーザーが自社の商品を購入するまでに、どのような接点でどのような体験をしてもらうのかをストーリー立て・図式化したものをカスタマージャーニーマップという。

このカスタマージャーニーマップでは、ユーザーの興味の段階(購買フェーズ)と、その段階に応じて自社が取るべき接触点およびユーザーの感情を整理する。

メールマーケティングを行う際には、カスタマージャーニーマップを意識したシナリオ設計をすることで、その他の集客施策との相乗効果が見込める。

関連記事:ペルソナとカスタマージャーニーマップ

自社を分析する

もし自社の商品の特徴や強みが分かっていないと、ユーザーにどのような切り口で商品の魅力をアピールするべきかが定まらない。

何となく商品の機能を並べたところで、ユーザーの心には刺さらない。

以下の項目について検討し、どのようなコンテンツを作っていくべきなのか、その方向性を見定める。

  • なぜその商品がユーザーの悩みを解決できるのか?
  • なぜユーザーに満足してもらえる自信があるのか?
  • なぜ自社の商品でなければならないのか?

資料を集める

特に定期的なメールマガジンを配信する場合は、執筆内容が尽きたり、同じような内容になってしまったりしないために、ストックは多めに用意することが重要。

資料集めのポイントは、企業の商品・サービスとユーザーの悩みを軸にすること。

ユーザーが自分からは集めにくい自社商品の詳しい情報や便利な使用方法、業界全体の動向に注目すると良いだろう。

既存コンテンツを活用する

自社製品が優れていると宣伝する前に、価値を提供することが必要。
価値を提供する手段の具体例としては、動画、ウェビナー、eBook、ブログ記事、ホワイトペーパーなどが挙げられる。

リードナーチャリングのメール用に新しくコンテンツを作成する必要はなく、既に自社が何らかのコンテンツを持っていれば、その資産を有効活用する。

これまでにリードのコンバージョン達成に役立ったコンテンツは、今まさに育成しているリードにとっても有益である可能性が高い。

コンテンツを作成する

メールの目的・目標・ターゲットを確認する

メールマーケティングを行う準備として、その目的と目標・ターゲットはすでに確認しているが、この工程は配信するメールごとにも行う必要がある。

メールによって目的は異なり、商品の認知を促すものもあれば、実際に導入を勧めるものもあるはずで、それによって期待する成果も異なるためだ。

また、抽出するリストの性質によって訴求するターゲットも変わるはずなので、誰のためのメールなのかも、ここで再度確認する。

構成を考える

以下の例では、メールマガジンを例に3つの要素で構成されている。

HubSpot Japanのメールマガジンから引用・編集

ヘッダー

ヘッダーはメールの冒頭にあたる部分。

メールマガジン全体の統一感を出し、ヘッダーを見ただけで配信元のメールマガジンが分かるようにする。

ヘッダーにはプライベートメールと区別する役割もあるため、メールマガジンの名前、会社名、Webページアドレスなどを記載するのが通例。

本文

本文では、伝えたい内容を“1段落1メッセージ”で端的にまとめ、適度に改行する。

下書きの時点では、各段落で担当者が伝えたい内容・それを読んだユーザーの気持ちを併記しておくと、段落ごとの役割が明確になり、執筆しやすくなる。

フッター

フッターはメールマガジンの終わりの部分。

発行者の名前、お問い合わせ、メールマガジン解除フォームへのリンクなどを記載する。

購読解除の方法の記載は法的に定められた義務であるため、必ず挿入する。
(参考:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

配信設定をする

配信リストを作成する

顧客リスト(見込み・既存いずれにしても)の中からメールを実際に配信するリストを抽出する。

メールマガジンであれば、リスト全てのリードにメールを配信するだけだが、その場合は開封率やクリック率が低くなりがちだ。

可能な限り、共通の性質を持ったリードや特定のアクションをしたリードを抽出(セグメント)して、類似するリードがセグメントされたリストにメールを配信するべきだ。

セグメント配信・差し込み機能を活用する

セグメント配信あるいはグループ配信と呼ばれている機能は、性別や年齢などの情報によって、リードをグループ分けすることができる。

セグメントすることで、そのグループが興味を持ちそうなメールを選んで配信することや、一部のコンテンツの作り方を差し替えたメールを配信することができる。

さらに、差し込み機能でリードや担当者の名前を自動で差し込めば、よりリード個人に寄り添ったメールを配信可能だ。

件名を決定する

件名はユーザーが最初に目にする部分であり、メールの開封率を大きく左右する。

メルマガの内容を具体的に示すことと、即時性を強調することが重要である。

件名を確認してその場で開かれなければ、後で開かれることもなく放置されてしまうため、即時性(今この瞬間に読む必要)があると感じてもらうことが特に重要。

マルチパートに対応しているか確認

メールマーケティングでは効果測定が可能なHTMLメールを使用することが基本だが、ユーザーの受信環境によってはHTMLメールを開けないこともある。

そのため、HTMLメールを読むユーザーとテキストメールを読むユーザーの両方に配信できるように、マルチパート配信は必ず設定しておく。

URLパラメータを付与する

メールの開封やクリックはメール配信ツールやMAで計測が可能なものが多いが、Googleアナリティクスなどではメールに記載されているURLからのアクセスを判別できない。

そのため、メールに記載するURLには「パラメータ」を付与して、メールからのアクセスであることを計測可能な状態にしておく必要がある。

URLパラメータの設定は以下のように行う。

例:https://techlabo.jp/?utm_source=newsletter&utm_medium=email&utm_campaign=Campaign202008

上記のURLは以下のように分解できる。

  • https://techlabo.jp/
    • WebページのURL
  • utm_source=newsletter
    • プロパティにトラフィックを誘導した広告主、サイト、出版物、その他を識別
  • utm_medium=email
    • 広告メディアやマーケティング メディアを識別
  • campaign=Campaign202008
    • 商品のキャンペーン名、テーマ、プロモーション コードなどを指定

Campaign URL Builder というサイトでパラメータを付与したURLを生成可能だ。

配信設定を行う

一般的には、メールが開封されやすいのは火曜日だと言われているが、実際には業界や業種、役職によって様々。

ターゲットの活動時間を推定して、最適な時間帯に送信する。

効果測定をする

効果のあったキャンペーンとなかったキャンペーンを把握できるようにしておかなければ、継続的な改善はできない。

設定した目標に合わせて測定指標を決めていく。

ブランド構築・認知度の向上 ブランド名による検索やウェブサイトに直接流入するトラフィックを測定する。
リードの質を向上 質の高いコンバージョンの数やリードの質の推移を測定する。
リードの獲得 獲得した新規顧客の数や、Eメールのクリックスルー率、デモの予定件数など、リードナーチャリングの努力によってデータベースがどれほど拡大しているかを測定する。

メールマーケティング で見るべき指標

ECサイトでは到達不能率、購読解除率などの指標も意識した方が良いが、配信母数が少ないBtoBでは「開封率」と「クリック率」の2つの指標が主に見るべき指標となる。

指標の目安

  • 開封率:15%以上
  • クリック率:1.5%以上(分母は配信数)

購読解除率が高い場合は、リストのセグメントが悪いか、配信内容が悪いかのいずれかである。

目安として1%を上回るようであれば見直しが必要。

メールマーケティングのテクニック

ステップメール

BtoBのメールマーケティング手法の中で、ステップメールは以下の理由で投資対効果が高い手法の1つである。

  • 多くの見込み顧客に対応できる
    • 検討期間が長いBtoBでは、個別の営業活動に頼ってもマンパワーの限界がある。ステップメールなら、多くの見込み顧客のナーチャリングが可能。
  • 営業スキルを均一化できる
    • ステップメールは見込み顧客に伝えたい内容を設計し順番に自動で配信されるため、営業個人のスキルのバラツキに左右されることがなく、見込み顧客に伝えることができる。
  • 属人化を防ぐ(メルマガよりハードルが低い)
    • メルマガは往々にして属人的になりがちで、担当者がいなくなることで継続が困難になるケースもある。ステップメールであれば、シナリオを決めて運用を始めたら自動配信されるため、属人的にならずに運用することができる。

ステップメール作成のポイント

もし自分がステップメールを受け取る立場だったとして、最初のメールから売り込みをかけられ、それがステップメールとして何回も届いたら、少なくともそのアドレスからのメールに好印象を抱くことはないだろう。

営業活動に置き換えると、こちらのニーズも知らないうちに押し売りをかけてくるのと同じことで、迷惑極まりないだろう。

ステップメールの、特に初期段階のメールでは、ユーザーにとって役に立つ情報を提示し、ユーザーが自ら情報を求め、学習する手助けをする。

顧客の購買フェーズに合わせて、徐々にソリューションの紹介を行う。

ステップメールの配信タイミング

配信対象 セミナー参加者
リードの心情 ある課題の解決に向けて、情報収集を幅広く行っている段階
ステップメールの例 1通目:参加の御礼、業界における一般的なお役立ち情報【御礼】
2通目:自社の強み、商品の強み【ブランド認知】
3通目:別のお役立ち情報、別のセミナーやショールームの案内、他社比較やコストシミュレーションなどの具体的な検討コンテンツ【商品訴求】
ポイント セミナー参加後も、相手の役に立つ情報を送りながら、自社や商品を紹介しつつ、見込み顧客の意識を高めていく。
配信対象 お役立ち資料をダウンロードした方
リードの心情 ある課題の解決に向けて、具体的に情報収集を行っている段階
ステップメールの例 1通目:資料ダウンロードの御礼【御礼】
2〜3通目:更なる課題解決の事例【お役立ち情報】
4通目:自社の強み、商品の強み【ブランド認知】
5通目:セミナーやショールームなどの案内【オフラインへの誘導】
ポイント 資料ダウンロードしただけでは、まだまだ距離感があるため、例え架電をしても「情報収集中」といってやんわりとかわされる可能性が高い状況。この状況では、相手の役に立つ情報を送りながら、徐々にコミュニケーションをとりつつ見込み顧客との距離を詰めていく。
配信対象 資料請求した方
リードの心情 (個人情報を渡しても良いから)資料を見てみたい
ステップメールの例 1通目:資料請求の御礼【御礼】
2通目:具体的な課題解決のモデルケース紹介、他社比較やコストシミュレーションなどの具体的な検討コンテンツ【商品訴求】
3通目:セミナーやショールームなどの案内【オフラインへの誘導】
4通目:無料トライアルやキャンペーンの案内【ひと押し】
ポイント 資料請求を行った見込み顧客の検討状況には差がある。個人情報を気にせず比較的気軽に資料請求する方もいれば、数社に絞った段階で資料請求する方もいるため、ステップメールでクリックの反応を見ながら配信するメール(シナリオ)をわける。
配信対象 商品・サービスを購入した顧客
リードの心情 購入したからには)使いこなしたい。導入したことで、コスト削減や生産性の向上などの成果を出したい。
ステップメールの例 1通目:購入の御礼、問い合わせ先やよくある問い合わせの紹介【お役立ち情報】
2通目:使い方や更なる活用方法の案内【お役立ち情報】
3通目以降:バージョンアップ、活用方法の案内、アンケートなどで改善ヒアリング【継続的なコミュニケーション】
ポイント 購入後のフォローは重要だが、営業としてはあまり時間をかけたくないのが本音。従って、フォローの一部はステップメールを活用して営業生産性を上げることも手段の一つ。

ステップメールの設計は様々あるが、最もレスポンスが良いのは一通目である。

メールアドレスを獲得したタイミングにあった内容を私的メールのように送るのがポイントだ。

例えば、資料請求であれば「届いたか?」のさりげない確認。お役立ち資料のPDFダウンロードであれば、情報収集中と思われる場合は「参考になったか?他にもこんな情報もある」など、相手に合わせた内容にすること。

2通目以降の配信タイミングも、くどくなりすぎず、忘れられるほど間を開けず…というさじ加減を考える必要がある。

ただし、この配信タイミングには正解がないため、仮説を立て繰り返しPDCAを回すことが重要。

指標の改善

先述の通り、BtoBで見るべき指標は「開封率」と「クリック率」の2つだが、他の指標は無視しても良いということではない。

「業界平均」といったベンチマークにさほど意味はないが、数値が高すぎる(低すぎる)際は何かしらの問題が発生しているため、そういった問題の早期発見と改善のために、以下を参考にされたい。

  概要 計算式 ベンチマーク
不達率 送信後にエラーで送信できなかった割合 エラー数 ÷ 配信リスト数 × 100 10%未満
開封率 メールが開封された割合 開封数 ÷ 配信成功数 × 100 15%以上
クリック率 メール本文内のURLがクリックされた割合 クリック数 ÷ 配信成功数 × 100 1.5%以上
CVR メールからWebページに遷移し、成果につながった割合 コンバージョン数 ÷ クリック数 × 100 1%以上
購読解除率 購読解除(配信停止)された割合 購読解除数 ÷ 配信成功数 × 100 0.25%未満

これらのベンチマークをクリアしている場合は、数値上は問題がない状態と見て良い。

配信リスト数

配信リスト数は企業によって完全に異なる指標であるため、上記のようなKPIとしての指標ではないが、配信リスト数が多ければ多いほど、メールマーケティング の費用対効果は向上する一方で、配信リスト数が少ないBtoBにおいては、いかに配信リスト数を増やすのかがメールマーケティングを効果的に遂行するための前提条件となる。

基本的には有益で関連の高いコンテンツを提供して、購読者に集まってもらうという考え方でリストを増大させる。

方法論としては、ブログの開始や、良質なコンテンツの作成、検索に対する最適化(SEO)といった施策が考えられる。

関連記事:インバウンドマーケティングとは

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不達率

到達率が低い場合、まず行うべきは配信リストのクリーニング(到達しないメールアドレスをリストから除外して到達するメールアドレスだけのリストにすること)である。

メール配信ツールの分析機能などを活用し、配信エラーが起きているメールアドレスを特定し、そのアドレスの配信を停止する。

また、リストのクリーニングだけでなく、リストのセグメント(分類)も併せて実施する。

登録メールアドレスを1つのリストで管理するのではなく、ユーザーの属性や好まれるカテゴリなど、基準を作り分類する。

セグメントは、後述する開封率低下の改善にも関連するため、リストのクリーニングと並行して進める。

開封率

ユーザーにとって関心の低いテーマのメルマガや、そもそもメーラーを開かない時間帯に配信している場合などに開封率が低下する。

開封率の改善には、以下のような方法が効果的だ。

差出人を個人名にする

差出人が企業名だと、一斉送信の宣伝メールのように見えて開封されにくくなるため。
(いつも有益な情報を送ってくる企業だと認知されれば、企業名がブランドになるため問題ない)

メールの件名を工夫する

  • 文字数は短く、端的に表現する
    • メルマガの件名は15~20文字くらいしか表示されないので、一番伝えたい情報を先頭に持ってくる
  • 知見や知恵を得られると思わせる
    • 情報提供型のメールでは、ニュースではなく、読者の知見となるテーマを件名に明示する
  • 限定感を醸成する
    • 商品・サービス販促型メールでは、「時間的・数量的限定」(冬季限定、母の日など)や「無料」など、背中押し要素を件名に明記する
  • 読んで欲しい対象者を限定する
    • 商品・サービス販促型のメールでは、「分野」「テーマ」の分類など、焦点を絞り込む要素を件名に明記する
  • 社名・サイト名を含めない
    • ファンクラブのように会報でも無い限り、メルマガそのものに独自の名前を付けたり通し番号をふるのは全く意味がない
    • ブランド名などは差出人情報に記載すれば十分
  • 名前の差し込みは関係性次第
    • 【○○様】などのような名前の差し込みは、関係性のできていない読者(コールドリード)に送付しても開封率は上がらない
  • 【】を使わない
    • 【セミナー紹介】【プレスリリース】など、【】をつけると一斉メールらしさが出てしまう
    • そもそも、文字数的に無駄
  • 「4U原則」を用いて件名を決める
    • Urgent(緊急性)
    • Unique(独自性)
    • Ultra_Specific(超具体性)
    • Useful(有益性)

配信時間を工夫する

配信時間は、配信リストのユーザー属性に合わせて検討する。

BtoBの場合は、一般的には平日の始業前・昼食前・15時頃が良いとされているが、深夜帯を除けば、開封にベストな時間というのはない。

GoogleAnalyticsなどで自社のWebサイトへの訪問数が多い時間を調べ、そのタイミングに合わせて配信するのが良いだろう。

なお、毎週同じ曜日に送るというような定期配信は、メールマーケティングでは意味をなさないため、特段こだわる必要はない。

配信頻度を上げる

「むやみやたらとメルマガを送付することで、ユーザーにネガティブな印象を与え、購読解除につながってしまうのではないか」という心配は不要である。

購読解除の理由は「不要だから」であり、そのようなユーザーは頻度に関係なく購読解除の理由があり、元より態度変容を起こさない。

開封率15%で10000件のリードに送信したとして、開封しなかった8500件の心配よりも、開封する1500件を発見しナーチャリングすることが、メールマーケティングの本質的な目的である。

配信頻度を落とすという事は、その1500件のユーザーの目につくタイミングを失うということに等しい。

会報などのように読者が配信タイミングを把握しているメールでない限り、ユーザーの目に入れるためには配信頻度を高く設定すべきだろう。

配信セグメントを設定する

ターゲットごとのメール送信はもちろん、会員データを元にしたメールを送ることで開封率アップにつながる。

メルマガの内容は、受け手にとって有益な情報でなければならず、「ターゲットが欲しい情報」を読み取って送信することが重要だ。

「ターゲットが欲しい情報」は属性データ(業種業界、職種、役職)によって選別が可能だが、行動データによるセグメントで「ホットリード」と「コールドリード」に分類する方法も効果的だ。

ホットリード ・過去1カ月に何度もメールを開封し続けている人
・過去1カ月に何度もリンクをクリックしている人
・料金表など重要なコンテンツに誘導するメールを開封した人
コールドリード ・何の反応もない人
・一回しか開封していないような人

コールドリードに対しては、セミナーや展示会などオフライン施策の紹介、ホワイトペーパーダウンロードなどのメールを配信して、ナーチャリングを継続する。(セールスメールはほぼ成果が出ず、購読解除につながるリスクがある)

一方でホットリードに対しては、製品やサービス紹介などのセールスメールを配信する。

開封率でリードナーチャリングの段階を推測する

開封率を追跡することで、リードナーチャリングの対象となる人々にとって、そのキャンペーンで提供しているコンテンツが適切かどうかを判断することができる。

例えば、自社製品の無料トライアルなど製品関連のコンテンツを提供したとして、メールの受信者がそのコンテンツをクリックしていないとしたら、今はまだそのコンテンツを提供する段階ではないと仮設を建てることができる。

そして、情報提供用のeBookやウェビナー、ブログ記事といったファネル最上層(認知層)向けのコンテンツを使ってリードを育成するという次の施策を打つことができるようになるだろう。

反対に、メールの受信者がファネル最上層向けのコンテンツを開封しなくなった場合は、そろそろ製品・サービス関連のコンテンツを提供する頃合いだと考えてもよいだろう。

クリック率

メールに記載したURLのクリック率が低い場合、メールのコンテンツ内容に問題点がある可能性がある。

例えば、定型文の「お知らせ」を配信しつづけてしまうことでクリック率の低下を招く可能性があります。

そうでなくても、ユーザーにとって有益な情報を届けられるよう、コンテンツを更新することが重要。

セグメントしたリストごとに、メルマガで訴求する軸を変えて作成し、HTMLメールであればレイアウトや配色、写真などデザインの改善も検討する。

CTAはファーストビューに

メール本文は読まずに件名とファーストビューの数行だけ読んで、詳細はクリックしてページで確認することも多い。

よって、コンバージョンポイントにデリバリーするための導線となるリンクやボタン(CTA)は、一目見てすぐのところに入れておく。

コンテンツ量は1スクロール程度

1つのメールにかける時間は7秒と言われており、文章が長いと読み飛ばされるか、読むのが嫌になってしまう。
(7秒というのは文字数にして70~140文字ほど)

メインコンテンツは1つあれば十分であり、本文は端的にしてウェブサイトに誘導する。

クリックしてもらいたい箇所は「ボタン」に

メール本文においてリンクのバナーが埋込画像に見えるよりも、クリッカブルなボタンの方が効果が高い。

また、「そのURLをクリックするメリットは何か」をコンテンツ内で提示するなど、ユーザーがクリックしやすい工夫をする。

1メール1コンテンツ

一度CTAをクリックしてコンバージョンポイントへ移動したユーザーは、基本的にはもうメルマガに戻ってこない。

また、コンテンツ内のCTAの位置は下に行けば下に行くほどクリック率は低下する。

よって1つのメールに複数のコンテンツを入れるのではなく、コンテンツごとにメルマガを分けるほうが成果は出やすくなる。

件名と本文内容を一致させる

メルマガの読者は件名をクリックした時点でコンテンツ内のCTAをクリックするかどうかを決めている。

クリック数を増やすためには、件名にキャッチーなコピーをつけて開封数を増やすよりも、コンテンツの一部を件名に含めることで件名とコンテンツを一致させた方が最終的な成果につながる。

コンバージョン率(CVR)

コンバージョン率が低下する場合、メールに記載したWebページに原因がある。

配信したメルマガと飛び先であるWebサイトの雰囲気が異なれば、ユーザーが違和感を感じる原因となる。

メルマガで訴求した内容と飛び先のWebページにギャップが発生していないかを必ず確認し、Webページが獲得したいユーザーに向けたコンテンツにできているかどうか見直す。

購読解除率

あなたのメールマガジンを購読解除する人は、そもそも自社の商品やサービスに興味がないので、いくら待っていても買ってくれるわけではない。

そういう人が解除してくれたことで、リストの質が上がったと考えればいい。

たとえ、今回の内容が自分にそぐわなくても、「過去にセール紹介のメールで買い物をしたことがある」などメリットを感じた経験がある顧客や、「いつか買うかもしれない」と考えている本当の見込み客は購読解除することはない。

とはいえ、メールを送るたびに大量の購読解除が発生してしまっては気が気ではない。

購読解除率が0.3%を超えるような場合は、メールそのものではなく、「リストがそもそも商品のターゲット層ではない」とか、「受け取り手の温度感を考えず、セグメンテーションなしで同一内容を一斉配信している」など別の問題があると考えるべきだろう。

つまりは、リストの問題だ。

無関係者のリスト登録はやめる

そのサービスへの問い合わせではなく、まったくの別件で名刺交換した人をリストへ登録しても成果は出ない

登録フォームで具体例を載せる

メルマガの登録フォームに、どのようなメールが届くようになるのか具体例を載せることで、受信後のギャップによる購読解除を抑制することができる

登録特典をつける

メルマガ登録時の自動配信メール(サンクスメール)の開封率は60%以上で、最初に受け取ったメールでメリットを享受した読者はその後も購読を続ける傾向にある


参考URL

参考文献