BtoBのデジタルマーケティングにおいて、まずは顧客の理解が必要となる。

この顧客の理解に役立つのが「ペルソナの作成」と「カスタマージャーニーマップの作成」である。

本記事では、ペルソナとカスタマージャーニーマップの概要と作成方法を解説する。

ペルソナとは

ビジネスにおいて使用する「ペルソナ」というのは、マーケティングやサービス開発・事業開発を行う際に「ヒアリング」を行う「仮想の相手(お客さん像)」のこと。

コンサルティング先で説明をしているペルソナづくりのポイントなど

ペルソナとは、架空の人物を緻密に設定していく手法(フレームワーク)のことを指す。

ペルソナで表す人物像は架空ではあるものの、実際の潜在顧客・見込み客・顧客の特徴を表している。

ペルソナを設定する目的

How can you possibly market your product or service if you don’t know who your target audience is or what your client looks like? The answer is – you can’t. You could have the best product/service in your industry, but if you don’t market it to the right people, you might as well be selling cigarettes to babies.

(ペルソナとは、あなたが売りたい製品やサービス、ソリューションについて購買の意思決定を行ったり、あるいは影響を与えたりする実際の顧客の一例のこと。

またペルソナは、競争ではなくあなたを選ぶように説得するための戦略ツールです。)

Creating Better Content with Buyer Personas: Content Marketing Tips

ペルソナを設定する目的は、ペルソナを前提としてマーケティングの戦略を設計したり、コンテンツを作成することで、企画の一貫性を生むところにある。

実際の顧客の人格像を象徴的に表現したものであるため、マーケティングやセールスを実施していくうえで、顧客を理解する指針にもなるだろう。

一方で、ペルソナが実際の顧客の人格像からかけ離れている場合は、マーケティング施策そのものが破綻する恐れがある。

以上のことから、、理想的なペルソナは「実在する代表的な顧客像」であるといえる。

自分たちが相手にする顧客を理解することから始める

  • お客さんはどのような人なのか?
  • どのような仕事をしていて、どのような業務上の課題を持ち、どのような情報源を使うのか?

マーケティングにおける良いペルソナとは、各部署で共有できる顧客像を提供するだけでなく、顧客の課題、ニーズがどういったものであって、そこに自社の商品・サービスがどのようにフィットするのか、どのようなマーケティングメッセージにするのかを明らかにする。

ペルソナを作る上で重要な5つの要素

The 5 Rings of Insight tell you what triggers the buyer’s interest, how they define success, their barriers or obstacles to purchase, their decision criteria, and the buyer’s journey.

(ペルソナを形成する5つのポイントは、購入者が興味を持つきっかけ、成功の決定要因、購入への障壁または障害、意思決定の基準、購入までのストーリーを教えてくれます。)

Turbocharge Your Buyer Personas With The 5 Rings Of Buying Insight – SupaReal Blog

事業環境・重点課題(Priority Initiatives)

購入者にとって、どういった理由であなたが提供するソリューションにお金を落とすことに至るのか。

また、現状に満足しているような購買者と比べて、あなたの商品を買うような購買者は何が違うのだろうか?

成功決定要因(Success Factors)

そのペルソナは、そのソリューションを購入することで、どのような業務上の(ないしは個人的な)結果を期待しているのだろうか?

知覚障壁(Perceived Barriers)

もしそのペルソナが、あなたのソリューションを買わないとしたら、それはどのような障壁があるからだろうか?

バイヤーズ・ジャーニー(The Buyer`s Journey)

ペルソナが、購買検討のそれぞれのステージにおいて、どのようなストーリーを持っているのか、それを明らかにすべき。

判断基準(Decision Criteria)

あなたの商品やサービスのどのような側面が、購買者が購入する際の決定要因になっているのか、そしてそれによって期待されていることは何か?

ペルソナの設定方法

「実在する代表的な顧客像」に近づけるためには、以下のような方法でデータを収集し、アウトプットする。

ヒアリングやアンケート

“Our solutions could never evolve from a boardroom discussion, We go straight to the source. We don’t ask our grandmother what she thinks about our motorsport mounts apparatus; we ask race car drivers.”

(私たちのソリューションは、役員会議での議論から進化することは決してない。モータースポーツ用の機材についてどう思うか、私たちは祖母に聞くことはない。代わりに、レースドライバーに直接聞くだろう。

Founder and Chief Executive Officer (CEO) of GoPro – Foreword – Buyer Personas: How to Gain Insight into your Customer’s Expectations, Align your Marketing Strategies, and Win More Business [Book]

そもそも、「実在する代表的な顧客像」を私たちが理解している必要がある。`

営業の担当者は自分が担当している顧客のことは「肌感覚」では理解している「つもり」だが、本当のところどうなのかといったことを実際にヒアリングしている担当者はさほど多くないだろう。

このような状況で担当者をあつめてブレストをしたところで、担当者が「勝手に」作り出した「妄想の顧客像」を折衷案的に作り出すほか無いだろう。

よって、「理想の顧客像」を設定する際には、RFM分析などで代表的な顧客を割り出し、ヒアリング(アンケート)を実施してリアルなデータを集めることから始める。

何を聞くべきか

例えば、コンテンツを作成する際のペルソナを設定する際には、以下の事項についてヒアリングをしたい。

  • 普段、どのように情報収集を行っているか
  • (業務で)どういったことに不安を覚えるか、悩んでいるか
  • 不安や悩みに対して、どのように解決しようとしているか
  • 私たちにどのような働きを期待しているか
  • どのような意思決定プロセスを経るのか

既存顧客がいない場合

新規事業や新しい市場へ参入する場合、適切な既存顧客が存在しない場合がある。

こういった場合は、「今後取りに行きたい顧客」の像を設定する。

ペルソナシートを作成する

ヒアリング(あるいはデータを根拠としたブレスト)を実施したあとは、以下の要領でペルソナシートを作成する。

  • 個人的傾向・背景
    • 年齢
    • 家族構成
    • 受けてきた教育
    • 性格の傾向
    • 購買の傾向
    • 業務後の過ごし方
    • 休日の過ごし方
    • どんなメディアを使っているか
    • どんな趣味嗜好
    • 社外の人とやり取りするのに好むコミュニケーション手段は何か?
    • ネットを使って業務上の情報を調べることがあるか?
    • 調べる場合はどのようなことを調べるのか?
    • どんなツール、サイトで調べるのか?
  • 所属組織の情報
    • どのような産業に属する、どのような企業に勤務しているのか?
    • 会社のサイズは?(売上規模、従業員数など)
    • その企業の課題は?
    • その企業の取引先は?
  • 業務上の役割・活動
    • 組織の課題と自身が置かれた状況は?
    • 仕事上の役割・役職は?
    • 仕事の成果がどのように計られるか?
    • 一日をどのように過ごしているか?
    • どのようなスキルが求められているか?
    • とんな知識が必要な仕事をしているか?
    • どんなツールを使って仕事をしているか?
    • 仕事上の報告義務は誰か?あるいは報告されるなら誰か?
  • 業務上のゴール
    • 何を担当しているのか? 何の責任者か?
    • その業務において「うまくいっている」、「成功している」とはどのようなことを指すのか?
  • 業務上の課題・チャレンジ
    • 最も大きな、あるいは直面している課題やチャレンジはなにか?
    • どのようにしてその課題を克服するつもりなのか?
    • 所属している業務関係のコミュニティやグループはあるか?
  • ペルソナへのアンサー
    • ペルソナに対して提供する商品・ソリューションは何?
    • なぜペルソナはその商品・ソリューションを購入するのか?
    • その商品・ソリューションを相手の言葉に置き換えると?
    • その商品・ソリューションについて、ペルソナに4~5行程度で説明するとすると?

BtoBのペルソナシート

BtoBの場合は、あなたの会社と最初に接点を持つ情報収集者と意思決定者(決裁権者)が異なるケースも多く、複数人が意思決定に関わることも少なくない。

よって、BtoBのペルソナシートは「意思決定に関わるすべての人」を作成する。

また、会社によっても承認プロセスやカルチャーが異なり、マーケティング戦略に大きな影響を与えることから、個(人)のペルソナとは別に「会社のペルソナ」を作成する必要がある。

会社のペルソナでは、主に以下の事項について設定する。

  • 業界や会社の規模、予算
  • 意思決定プロセス
  • 意思決定の価値基準

「未来のペルソナ」を設定する

ここまでで作成したペルソナは「現在のペルソナ」であるが、あなたの会社の商品やサービスを得た「未来のペルソナ」も設定する。

「カスタマージャーニー」を書く前に、「現在のペルソナ」とそのペルソナが将来どうなることがそのペルソナにとって happiness になるかを描いた「未来のペルソナ」。

いいペルソナ、悪いペルソナ〜高広流ペルソナの作り方

ペルソナの「現在」と「未来」を見える化することで、その過程に取るべき戦術が明らかになる。

価値は相手の変化量

提供前後でペルソナに与える変化量が少ないソリューションにバリューはない。

ペルソナを設定する際の注意事項

ペルソナを設定する際には、以下の点に注意する必要がある。

自社にとって都合のいい人物像=ペルソナではない

ペルソナは「現時点での代表的な顧客像」であり、それはデータの裏付けをもって決定される。

しかし、多くのペルソナ設定現場では各々の主観的な感覚や理想などでペルソナを設定しがちだ。

このような、データの裏付けがない主観的なペルソナでは、以降のペルソナに基づく戦略も企業の独りよがりなものになりがちだ。

調査なきペルソナは「実在しない顧客」

細かく設定しすぎない

ペルソナの項目を細かく設定しすぎると、以下のようなデメリットが発生する。

  • コンテンツや機能のプランにつながらない
  • 細かい設定に惑わされて検討ポイントがずれてしまう
  • 調査や検討が複雑になって焦点が絞りにくくなる
  • ペルソナの設定に必要以上に時間がかかってしまう
  • 個のペルソナに執着し、本当に重要なターゲットの「面」を取り逃してしまう

ペルソナとターゲットは何が違うか

ペルソナは「想定された個人」であり、ターゲットは「実在するセグメント集団」である。

より具体的にいえば、ペルソナは「顧客の顔が想像できる」、「顧客の行動が想像できる」、「顧客の考えが想像できる」というように、より顧客を人間的に扱うという点で伝統的な「ターゲット」という考え方と異なる。

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップは、ペルソナを元に見込み客の行動や心理状態を分類し、取るべき施策の軸を作ることに目的がある。

ペルソナやカスタマージャーニーマップで施策の軸が定まっており、メンバーと共有されていることで、各々が共通した判断基準で施策の立案・実行が可能となる。

逆に、カスタマージャーニーマップがない場合、作成したコンテンツが「なぜ」「どのようにして」閲覧され、結果として「ユーザーにどのような変化をもたらしたか」といった基準がないため、「面白いか、バズるか」といった曖昧で目的を見失った基準でコンテンツを作ってしまいがちだ。

ペルソナとカスタマージャーニーの関係

ペルソナが「登場人物」であれば、カスタマージャーニーは「成長物語」である。

つまり、カスタマージャーニーは「設定した登場人物(ペルソナ)が『見知らぬ人』から『顧客』に成長するまでのストーリー」といえる。

顧客の情報行動や購買プロセスを理解する

  • 顧客の視点で作成する
  • 購買のプロセスだけでなく、日々の業務上の課題解決のプロセスとして作る
  • どのような業務上の課題を持ち、どのような情報源を使うのか?

カスタマージャーニーマップのゴールは、顧客の視点から購買プロセスを総合的かつ個人のレベルに落とし込んで把握することにある。

売り手のプロセスと買い手のプロセス

  買い手のプロセス 売り手のプロセス
単に何かについて学んでる 購入者を育てよう
何かを買う理由が出てきた 購入動機を把握しよう
課題を把握、定義しなければならない どのような課題があるのか理解しよう
どんな選択肢があるか調べよう どのような解決策があるか提示しよう
課題の解決策をそれぞれ比較しよう リスクと反対意見を乗り越えよう
選択肢をいくつかに絞ろう クロージングに向けて努力しよう
最終的にこれを選ぼう 契約書作り・事務処理
決定事項を実施に移そう ソリューションの提供を実施しよう

カスタマージャーニーマップは、「買い手のプロセス」を表現するものであり、買い手の課題をトリガーとして設計され、売り手からは見えない買い手の行動や意識を表現する。

対して、ファネルは「売り手のプロセス」であり、売り手の売りたいタイミングから設計が始まる。加えて、売り手側で見えている部分しか図示化されない。

カスタマージャーニーマップの作り方

先に設定した「現在のペルソナ」をスタートライン、「未来のペルソナ」をゴールとして、その過程のユーザーの行動プロセスをシナリオ化する。

まずはカスタマージャーニー(見込み客の行動、思考、感情)のディテールを理解する。

基本的なフレームワーク

まずは見込み客の購買ステージで分類する。

  • 潜在層(課題やニーズが明確になっていないが不安を感じている)
  • 準顕在層(課題が明確になったものの、解決策がわからない)
  • 顕在層(課題を解決するための方法について情報収集する)
  • 明確層(各ソリューションの比較検討をする)

これらの分類に、以下の要素をプロットしていく。

  • 見込み客の状態(課題)
  • 接触チャネル(行動)
  • 接触コンテンツ(情報ニーズと価値提供)
  • KPI(接触コンテンツの評価)

購買フェーズ別コンテンツ

購買フェーズごとに、見込み客が求めるコンテンツやチャネルは異なる。

BtoBのカスタマージャーニーマップ

BtoBの場合は、「意思決定に関わるすべての人」のペルソナを作成する。

よって、カスタマージャーニーマップも「ペルソナの数だけ」作成する必要がある。

また、個(人)のペルソナとは別に「会社のペルソナ」を作成していることからも、「企業単位のカスタマージャーニーマップ」も作成する。

企業単位のカスタマージャーニーマップでは、主に以下の事項について設定する。

  • 購入プロセス
    • トリガー
    • 課題の検討
    • サプライヤーのリサーチ
    • サプライヤーの評価
    • 購入決定
  • 個人のペルソナ(メイン・サブ)
  • 課題
  • 必要な情報
  • 情報リソース

ペルソナとカスタマージャーニーマップを活用する

ペルソナやカスタマージャーニーマップは作って終わりではない。

実際にマーケティング施策に落とし込み、本物の顧客との差異を見直し、改善を続けていく必要がある。